旅の続きです。
5月28日の朝。まどろみつつ起床。小雨。
函館の海はどんよりとした雲に覆われていました。
登りましょ、まだ入ったことのなかった、2006年に出来た新しい五稜郭タワーに。
道立函館美術館駐車場脇の桜もまだ、わさわさっと咲いてくれていました。可憐なり。
五稜郭の全容が眼下に! 知ってはいても実際に形を確認出来て感激しきり。
なにせ、前のタワーにすら昇ったことなかったので。
桜はみごとな葉桜になっておりました。左のほうに少しだけ花が残っているようにも見えます。
6月中には復元工事を終え、7月29日から一般公開予定の「箱館奉行所」。いずれ行ってみたいところ。
修学旅行の生徒たちにもみくちゃにされつつ、展望台内の箱館戦争関連の展示をじっくり見るにつれ、幕末ロマンへの関心がムクムクと頭をもたげてきました。今回そういう旅ではなかったはずなのに。前夜に市電の窓から見えた、十字街の「北海道坂本龍馬記念館」すらスルーしていたというのに。(時間を作って観覧しておけば良かったと今では思う)
ほうほう、龍岡城の五稜郭もなかなかに。いつか、ここを歩いてみたいものだ。新しいだけあって、見易くわかり易い展示でした。
さぁ、これからどこに行こうか。そうだ、展示で見た、箱館戦争当時の、旧幕府軍の松前攻めルートを辿ってみよう。そして、江差に行って開陽丸を見る、というプラン。ほとんどその場の思いつき。
さらば、五稜郭。また来るぜ今度は飲むぜ五稜郭。
函館を離れる前に給油。なぜか我がマチより10円ほど安い。ちなみに北斗市に入ると、急に高くなっててびっくり。五稜郭の戦いが終わって142年、函館のガソリンスタンド業界にあっては激戦が未だに続いているようですなぁ。
なお、満タン法で計算した往路での燃費は12.6km/L。ひたすら一般道を通り、途中で峠も通ったりしていたのに、この数字はとても嬉しい。エコタイヤを使っているからか、オイルを新品にしたからか。これまでは高速道を使ってやっと10~11km/Lがイイとこだったので、ちょっと驚き。有り難いことです。
旧大野町のあたりを通る。どこかに八郎沼公園があると思うが、立ち寄る用事はない。かつてそこへ何を観に行ったかはあえて書かない。
国道227号線に入り、山あいをひたすら走る。ここからは未知の道。二股古戦場を過ぎ、中山峠(へぇ~)を越え、しばらく行くと水面が見えた。ナビによればダムがあるようだ。
「史蹟 稲倉石古戦場」。ここにも碧血碑がある。前はこの谷のもっと下にあったのだが、ダムが出来て沈んでしまうのを避けるためにこの地に移したのだという。松前藩の館城にとっての砦となるこの地で、箱館戦争の初期に、旧幕府軍が松前軍を撃破した戦いがあった。その事を後世に伝え戦没者の英霊を弔うための碑。合掌。
鶉川をせき止めて出来たダム。この地でかつて激しい戦闘があったとは、碑がなければ想像もつかない。
さて、先を急ごう。途中道の駅など立ち寄りつつ、アイスクリームなど舐めつつ、お昼頃に江差着。
開陽丸に到着しました。
復元された、徳川幕府海軍の旗艦。そして箱館政権海軍の旗艦でもあれど、松前攻めに際して荒天のために失われた悲劇の艦。
海中から文化財としての開陽丸遺物引き上げに尽力された江差町の方々の情熱と行動力にはただただ感服するばかりです。司馬遼太郎のエッセイ(「この国のかたち」だったかな?)を読んでから一度は来たいと思いつつも果たせずにいて、今回唐突に叶いました。
鴎島。ユニークな形状の瓶子島も見える。折角だから散策しとけば良かったかな。この日の夜は小樽あたりまで行けるかと当初は思っていたのですが、午後2時半の時点で江差なら、到着は真夜中になってしまうのでちょっとキケン。そこまで行かず夜飲めて手頃に泊まれる温泉宿のあるところ……と考えて、倶知安に泊まることにしまして、それでも急がねば日没してしまいそうなので、ちょっと先を急いでいたのでした。もう一日くらい余裕を持った行程にしとけば良かったかなと今にして思う。
たいへんに優美な形状の、現代の海上保安庁のおフネも停泊しておりました。
開陽丸青少年センター。天気はどんより。
葵の御紋、のはずが三つ葉のクローバー、もしくはハート。今でこそ微笑ましく眺められますが、当時の幕臣たち忸怩たる思いだったろうねえ。自力で作り直したかったことでしょう。でもあえてしなかったのは、あるいはオランダの造船に敬意を表してのことなりしか。
岸壁と船の間にあって安定した環境なのか、ウグイがわんさか。開陽丸の中では餌も売ってました。餌やりを奨励しているのだなあとひとり面白がっておりました。
開陽丸の、ホンモノのシャフト。沈むに至った波浪のエネルギーを何よりも雄弁に物語ります。
館内、屋外を色々と見てみて、思うところ大でした。江差の町の人々の想いに少しでも触れられたかのような。
さぁ、道南を離れねば。折角なので日本海沿いの風景を楽しみつつ進もう。
乙部町、元和台海浜公園。この海岸ではないけど、箱館戦争の終盤、新政府軍が上陸したのはこの町であります。ひとまずかの戦を振り返る旅路はここに終わる。
ユリの根を使った饅頭が旨いらしいとのことで、道の駅で買ってゆきました。美味しかったです。
雄大な地層や海岸線をチラ見しつつ、ドライブ。至福の時。その後は八雲町に入る。日本海に別れを告げ、旧熊石町側から峠を越えて、ふたたび噴火湾を目指す。雲石峠。
八雲から国道5号線に沿って長万部に入り、蘭越町まで来てひとまずの休憩。道の駅がなかったらどうなるかと思うと本当に有り難い。
その後もひたすら車を走らせて倶知安町に入る。日没間近、回転寿司店にて夕食。なんでわざわざ山の中まで来て魚を食べるのかと、ひとり苦笑。
食後、ホテルに入る。ちょっと眠い。
ここで飲まねばこの町を選んだ理由が意味を成さなくなってしまうと思い、ベッドに倒れ込む前になんとか立ち上がり、街なかへ。徒歩15分。夜道こわいけど、きっと自分に出会う人のほうがコワく感じるさ。幸いにも、倶知安駅そばまで誰にも出会わずに済みましたが。
偶然の、羊蹄山と月のロケーション。雲は山頂部を囲むようにリングを形成しています。しばし、見とれてました。
倶知安駅前。「倶」の字の照明が切れていたのがちょっと残念ね。
スキーの町。夏もまた良し。
バーにてモルトウイスキーを飲みつつ生演奏を聴き、二軒目のスナックでは客同士(男)で話に花が咲く。オバちゃんひとりしかいないんだもん…。意気投合して次の店(より女の子の多い店)に誘われるも、温泉にも入りたいしで丁重にお断りし、タクシーにて帰宿。28日の夜はこうして更けていったのでした。
(29日に続く)
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