9時過ぎに、眠たい目をこすりながら会社を出た。青空の広がる、良い天気だ。自転車のカギを解いてよっこらせとサドルを跨いだら、道の向うから女性の2人連れが笑いながら歩いて来るのが見えた。ひとりは大きな花束を抱えている。少々フラリとした足取りなので、きっとメンズパブあたりで朝まで飲んでいたのだろうと想像した。つい、通り過ぎざまに花束を持った女性の顔を見たが、薄いこげ茶色をした大きなサングラスでわかりづらかったものの、間違いなくあの人だ。ほんの2年前までイベントがあれば足繁く通って姿を追った、あの人だ。最後に連絡を取ったのは半年前。まだ雪の深い時期のことだ。
向うはおそらく気づいていないだろうな…。
振り返り声をかけようかと一瞬考えた。だけど止めて、帰るべき道を帰ることにした。あの花束の意味が何なのか僕にはわからない。
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