至福の時間SFに出会う

時間SFモノということで気になっていた、近刊の「時砂の王」を読んでみました。

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時は26世紀、正体不明の異星人の侵攻により地球環境を失った人類は、天王星近傍の宇宙基地で反攻の機会をうかがっている。現時点での劣勢を悟った敵は、反物質の利用により増殖型戦闘機械に時間を遡らせ、過去の人類の絶滅を目論んでいた…という状況設定。早速、敵が増殖する前に刈り取ってしまうべく、人類に警告する「メッセンジャー」として過去の地球に派遣される人工知性体たち。そのうちの一体である「オーディン」=「メッセンジャー・O(オー)」の10万年に渡る敵との攻防が物語の主軸です。そして、文字通り時間を争う戦いの拮抗点となった西暦248年、日本列島の近畿。とある国の巫王たる「彌与(みよ)」と「O」との係わり合いをもう一つの軸に、この物語は綴られてゆきます。

イヤ~たまりませんでした。設定とストーリーテリングの巧みさにまず感服。個体としてはモノ凄い能力を持つメッセンジャーがなぜ完璧に人類を守る時間軍たり得ないかなど、分かりやすく登場人物に語らせているので戸惑うことがありませんでした。時間を遡行する敵との戦いでは22世紀や1943年などの社会描写が出てくるのですが、特に1943年はゾクゾクしましたね。ここいらへんだけでも、外伝みたいな形で読ませていただきたいものです。物語として重要な(結果的に人類にとって重要過ぎる)彌与の人間的な成長も丁寧に記述されていて、感情移入がし易かったです。ハードSFの要素十分なジュブナイルとして、中高生の読者をも掴みそうですね。

ただ少々気になったのは、時間干渉を並行宇宙の改変として捉えた物語にしては、因果律がずいぶんキッチリし過ぎているんじゃないかと感じた部分です。言ってしまえば、タイムパラドックス。そしてラストがああなるならもっと早く解決してたのではないかという事。でも並行宇宙の中では一見因果律に見えてそうではない状況もあり得る、と考えれば矛盾はない。ま、そんな感じで頭の中で補完して、ひとまず折り合いを付けております。